『千と千尋の神隠し』には外見が可愛らしく目が惹かれるような様々な神様が登場します。作中では重要な場面に出てくる神様からほっこりと外から千尋を見守っている神様まで!今回はそんな神様の誕生した理由や種類を紹介していきます。
千と千尋の神隠しとは?
『千と千尋の神隠し』は宮崎駿が監督・脚本・原作を手掛けたスタジオジブリの長編アニメーション映画。観客動員数2350万人、興行収入は308億円(再演を合わせると316億円)で日本の映画興行収入成績歴代1位の記録を持っています。海外からも評価が高く、「アカデミー賞」の長編アニメ―ションや「ベルリン国際映画祭」の金熊賞など様々な賞を各国で取った作品です。ちなみに日本の長編アニメで「アカデミー賞」を獲得したのは今作だけなんです!
『千と千尋の神隠し』に登場する神様とは
『千と千尋の神隠し』には様々な姿、形をした神様たちが登場しています。作品を振り返ってみると湯婆婆の「八百万の神様が疲れを癒しに来るお湯屋なんだよ。」というセリフがあります。もしかしたら神様たちは人々のが心が廃れ、環境が悪化したことによって疲れがたまっていたのかもしれませんね。そんな八百万の神様とはいったいどんな存在なのでしょうか。
八百万の神様について
「八百」とは数の多いこと、「万」は種類が非常に多いことを意味します。よって「八百万の神様」とは「数多くの、ありとあらゆる神様」ということ。キリスト教を信仰している方に神様の名前を聞くとイエス・キリストと答えるでしょう。それと同じように日本人がお参りやお願い事をしている神様こそ「八百万の神様」なのです。そんな「八百万の神様」の他の神様との違いを紹介していきます。
確立した教義がない
日本人がご飯を食べる際に「いただきます。」「ごちそうさまでした。」と言うように自然の恵み、命あるものの生死等に対する畏敬の気持ちから自然に生まれた信仰心なので従うための明確な教えはありません。
複数の神様がいる
他の宗教だと神様は1人唯一の存在として信仰されていることが多いですが、日本は自然界に対して敬う気持ちが基盤にあるので山や海、家や岩などいたるところにあらゆる神様が宿ると考えられています。
「八百万の神様」は元々亡くなった生き物の魂が移ったものと考えられており、神様によって様々な姿や形、誕生経緯があります。そう言ったことを踏まえてここからは『千と千尋の神隠し』に登場する「八百万の神様」を紹介していきます。
オオトリ様
大きなひよこの神様で顔が少しシュールだけどそれを含めて可愛らしいと子供から大人まで人気な神様です。油屋に来る際は大勢で一緒にお風呂に入ります。誕生の経緯は卵から生まれることが出来なかったひよこやニワトリに成長することが出来なかったひよこが神様となった存在です。
おしら様
白くてふくよかな体に赤いふんどしと頭に乗っている赤いお椀が印象的な神様です。大根の神様と言われており、実際に蚕や農業、馬の神様として東北地方にて同じ名前の神様が信仰されています。劇中では湯婆婆のところへ向かうリンと千尋に遭遇し、リンと別れて1人で最上階に向かうエレベーターに乗って湯婆婆のところまで連れて行ってくれるなどしゃべるシーンは少ないですが優しい神様です。また歩くたびに「キュッ、キュッ」となる足音がまた可愛らしさを感じます。
おしら様は農家の娘が一頭の雄馬に恋に落ちてしまい、怒ったお父さんがその雄馬を亡き者としてしまいます。しかし馬と共にショックを受けた娘も亡くなってしまい、その娘の魂がおしら様になったといわれています。
春日様
春日様は人の形をしていて、上の画像のように宮司さんのような身なりをしている神様です。宙に浮きながら移動しており集まって船に乗り油屋へとやってきます。春日様がつけているお面は「雑面」といって白い厚紙に目、鼻、口などを墨で書き、目の部分を三角形に切り抜いたものを指します。春日様は春日大社の祭神・春日神がモデルになったといわれており、このお面は実際に春日大社の舞で使われています。
オクサレ様
オクサレ様は全身ゴミとヘドロでご飯を腐らすほどの悪臭を放つ神様です。油屋の従業員たちは千尋に仕事を押し付け1人でお世話をしている途中、オクサレ様の背中に謎のトゲを見つけます。謎のトゲを抜くとオクサレ様から大量のごみや廃棄物が吹き出し、ヘドロもゴミもなくなったオクサレ様は「よきかな。」と言ってお油屋を出ていきました。その姿はまるで龍のよう。なんとオクサレ様の正体は「名のある河の主」だったのです。
それは現代社会の問題を表しているといわれており、ドラム缶や自転車など廃棄物を人間が河に不法投棄をして溜め込んでしまったためだと考えられています。宮崎監督は川の掃除をしている際に自転車を見つけ、そこからこのシーンの発想を得たとされていますがポイ捨てや不法投棄により自然が破壊されていることを世間に訴えているように感じました。
ニギハヤミコハクヌシ
ニギハヤミコハクヌシ(饒速水小白主)は湯婆婆の弟子で「琥珀川」の神様・ハクの正体です。ハクは湯婆婆の弟子になった際に本名を奪われ、本当の自分の名前も正体も忘れていました。しかし千尋は幼少の頃、「琥珀川」という川に落ちたことがあり、その時にハクに助けてもらった過去を思い出したのです。それによりハクは自分の名前を取り戻すことが出来ました。
カオナシ
カオナシも実は神様です。しかし「カオ」とは資格を意味しており「カオナシ」=「資格なし」という意味で油屋で遊ぶ資格のない神様を表しているといわれています。入れないためずっと外でたたずんでいたのですが千尋が招き入れてしまったため後々の騒動に発展します。
まとめ
社会や文化が発展するとともに人間によって自然の秩序が乱れ環境が悪化していく。「八百万の神様」は人々の病や不幸、負の念などをその身に受けるため恐ろしい姿をしているともいわれているのでオクサレ様があのような姿になってしまわれたのも自然を汚す人間の廃れた心のせいなのかもしれませんね。
他にももっと宮崎駿監督のメッセージがある作品ですが現代社会の問題を感じさせる1つの重要な場面としてオクサレ様を取り上げたのではないかと感じました。自然を大切にしていくことは今もこれからも大事にしていかなければならない考えでしょう。そして「八百万の神様」は多すぎてどこにいらっしゃっるのかわからないので何事にも感謝の気持ちを忘れずに大切に。
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